活動報告

環境大臣一年間の振り返り

今日の閣議後記者会見が安倍内閣で最後の定例会見ということで、環境大臣の一年間を振り返ってお話しました。
今回職員の皆さんに私の一年はどうだったのか?と聞いたところ、こちらをまとめてくれました。職員のみんなは私のことをこんな風に思ってくれていたんだなという想いで、会見ではお話しました。
改めて、この一年間支えてくれた環境省職員、応援してくれた全ての皆様に感謝しています。長くなりますが、お読み頂けたら嬉しいです。

私は、昨年の就任会見で、「環境省は社会変革担当省だという思いで取り組む」と申し上げました。その想いを持ち続けながら、この1年間精一杯取り組んできました。その後、新型コロナウイルス感染症の問題が発生し、今、私達は、感染拡大防止と社会経済活動の両立という、世界共通の大きな課題に直面しています。このような時代の転換点に立っている今こそ、コロナ前の経済社会に戻るのではなく、持続可能で強靭な社会への変革を実現できるかどうかが問われています。
こうした認識の下、私は、「脱炭素社会への移行」「循環経済への移行」「分散型社会への移行」という「3つの移行」による経済社会の「リデザイン(再設計)」が必要だと発信してきました。この移行は、急速に変化するグローバル経済における競争力の源泉、すなわち経済社会の「エンジン」であり、また、地球環境問題という重大リスクに対する予防、すなわち経済社会への「ワクチン」です。

この「3つの移行」は既に動き出しています。
その一つの例が、石炭火力発電です。就任直後の国連総会で、気候変動とエネルギーを巡る世界の話題の中心は石炭火力発電と再生可能エネルギーだということを痛感して以来、私は石炭火力発電について強い問題意識を持って取り組んできました。
今年の2月に、石炭火力輸出支援の要件の見直しについて政府内で議論を開始してから、環境省は、あるべき論をふりかざして対立するのではなくて、現実を直視してファクトを積み上げていくことに注力しました。その結果、7月に、海外への石炭火力輸出を「支援しないことを原則」にするという、抜本的な転換を実現することができました。また、こうした動きに呼応して、梶山経済産業大臣から、国内の非効率石炭火力のフェードアウト等について、より実効性のある新たな仕組みを導入すべく検討を開始する、そういう発表がなされました。これも大きな方針の転換でした。

こうした日本の石炭火力発電に関する政策の抜本的な転換については、先日のオンラインプラットフォームの場で、安倍総理からも世界に発信していただきました。脱炭素に向けた日本の揺るぎない意志を世界にしっかりと示すことができたと思います。

地域や企業においても、「3つの移行」は既に動き出しています。特に私は、地方公共団体、自治体とともに脱炭素へ向けたうねりを作り出したいと考えて、ゼロカーボンシティの呼びかけを続けてきました。その結果、就任当初わずか4つだった宣言自治体の数が、この1年間で152自治体にまで増えました。これらの自治体の人口は日本の過半数を大きく超えて、約7,100万人になりました。また、企業の脱炭素経営も加速しており、日本の、TCFD、SBT、RE100の参加企業・団体数は、それぞれ世界第1位、第2位、第3位であり、いずれもアジアで1位であります。こうした地域や企業の動きは、間違いなく「脱炭素社会への移行」を進める大きな原動力になります。

今後は、「選択と集中」によって生まれたリソースを、この「3つの移行」に集中投下していくことが重要です。来年度予算を含めた今後の取組については、今まさに省内で議論を進めています。例えば、「脱炭素社会」については、デジタル分野や物流、住宅など、コロナ禍での「新たな日常」を脱炭素化していくことが不可欠です。また、再エネ由来水素やゼロエミッション火力、CCUSなどの脱炭素イノベーションも、早期の社会実装を目指して加速化していかなければなりません。「循環経済」については、資源循環ビジネスを活性化して、ポストコロナ時代を支える新たな競争力の源泉としていくべきと考えています。今後、プラスチックの代替素材への転換などを後押ししていくとともに、企業や自治体、消費者など多様なプレーヤーを巻き込みながら、プラスチック資源循環戦略の具体化を進めていきます。「分散型社会」については、ゼロカーボンシティにおける再エネ導入支援パッケージ、これによって地域の取組をしっかり後押しするとともに、ワーケーションなどを通じて、国立公園の利活用を広げていきたいと思います。

さらに、こうした「3つの移行」をしっかりと支えるため、ESG金融やインパクトファイナンス、ナッジなどの取組を通じて、企業や個人の行動変容を起こしていくとともに、環境大臣就任以来問題意識を持って取り組んできた環境外交についても、オンラインプラットフォームの開催を大きな足がかりとして、さらに強化していくべきと考えています。

そして、この「3つの移行」に並ぶ、環境行政の大きな柱が、福島の復興と再生であります。東日本大震災からの復興に向けた取組は、私にとって、環境大臣に就任する前から強い思いを持って取り組んできたライフワークです。就任当初、内堀福島県知事から伺った「苦渋」と「信頼」という言葉を胸に刻んで、この一年、福島と共にやってまいりました。地元自治体、農家の皆さん、そして地元企業の方々、そして住民の皆さんなど様々な関係者の方々のお話を伺いながら、福島の復興に取り組んでまいりました。

今年3月には、除染が進められている拠点のうち双葉駅、大野駅、富岡駅の周辺で避難指示が解除され、JR常磐線が全線で復旧されました。また、今年8月時点で、中間貯蔵施設への除去土壌等の輸送量が輸送対象物量の6割を超えて、仮置場も約6割が解消されるなど、環境再生の取組が着実に進んできたことを実感をしています。一方で、来年で震災から10年を迎えますが、環境省が、福島の復興に向けた理解の醸成を図り、環境省自ら風評払拭・風化対策の先頭に立っていくことが重要です。これまで、飯舘村長泥地区での除去土壌再生利用の実証事業において、住民の皆様が大切に育ててこられたお花を、環境省だけでなく他省庁にも働きかけて、会議や会見などの場で活用して、また、今年3月には福島県の除去土壌を利用した鉢植えを大臣室等に設置して多くの方々に紹介をしてきました。さらに、脱炭素、資源循環、自然共生といった環境の視点から地域の強みを創造・再発見する福島再生・未来志向プロジェクトの取組を一層進めるべく、8月27日には「福島の復興に向けた未来志向の環境施策推進のための連携協力協定」を締結しました。また、協定にある未来志向のまちづくり実現に向け、大熊・双葉環境まちづくりミーティングを開催して、先日9月12日、その最終会合も開催しました。環境省は常に福島県と共にある。このことを頭に置きながら、この一年取り組んでまいりました。これからも、福島のために全力を尽くしていきたいと思います。
こうやって振り返ると、本当にたくさんの課題を環境省の皆さんと取り組んできました。

こういう課題を一歩一歩前進させることが出来たのは、私一人の力では出来ません。環境省の職員の皆さんに心から感謝したいと思います。今日冒頭でお話した通り、私は大臣就任の時に、「環境省は社会変革担当省である」と言いましたが、一年経って環境省自身も働き方で民間企業からは、デジタル化、テレワーク、ペーパーレス、これらが霞ヶ関で1位になり、今までこの省を変えたい、持続可能な働き方が出来る組織にしたいと頑張ってきた職員の想いを形にすることも一歩前に進められたと思います。
しかし、今私が一年やってみて感じることは、実は環境省が私のことを変革してくれた、そう思っています。環境大臣という立場を超えて、私自身のライフスタイル、生き方、身の回り、考え方、より持続可能な社会を作っていく一人として、どのような立場であっても、環境省の皆さんから注入してもらったこの想いを活かしていきたいと思います。
様々な残っている課題はあります。環境省が取り組むことで世の中の多くの方に役立つことも、たくさんあると思います。

例えば熱中症、今年も少しずつ秋に近づいてきましたが、亡くなった方が非常に多く、その中の9割の方が高齢者、9割の方が室内、9割の方がエアコンをつけていない、こういった事を来年は起こすことなく、環境省が各省庁をまとめて熱中症対策をどのように進め、一人でも多くの命を救っていけるのか、環境省が出来ることはまだまだあると思います。
最近では山小屋の組合の皆さんともお会いしました。コロナの中で登山客も減って、環境省も国立公園の維持運営にお世話になっている皆さんが、経営を含めて大変な思いをされていることが分かりました。
再エネの事業に取り組んでいる企業の皆さんからは、ここで止めずにさらに再エネを後押しして欲しいという声も届いています。

いずれにしても、環境省が世の中のためにできることはまだまだある。そのことをこれからも私は立場を超えて、環境省と共に職員の皆さんの想いを汲んで、歩んで行ければと思います。
改めて職員の皆さん、本当にありがとうございました。そして記者クラブの皆さんにも心から感謝を申し上げたいと思います。一年間会見の場、取材の場、現場色々なところでお世話になりましたが、皆さんのお陰で少しでも世の中に環境省が取り組んできたことが広まる一年であったとしたらこんなに嬉しいことはありません。
お世話になりました。ありがとうございました。以上です。