活動報告

パリ協定NDC(国が決定する貢献)の提出について

本日、NDCの提出について臨時記者会見を行いました。
今回のNDCの提出は、昨年12月にマドリッドで開催されたCOP25(気候変動枠組条約第25回締約国会議)から戻って以来、日本の気候変動に対する取組みが正当に評価される報告をすることが一番大事だと、 環境省内はもちろんのこと、関係する省庁にも繰り返し訴え、議論を重ねてきた結果です。様々な制約がある中で最善の形でのNDCの提出になったと考えています。
日本時間の31日(火)中に国連気候変動枠組条約事務局宛てに提出します。

ポイントは3つです。
1. 現在の中期目標を確実に達成するとともに、その水準にとどまることなく更なる削減努力を追求するために、中長期の両面で行動を強化する観点から、「地球温暖化対策計画」の見直しに着手します。また、同計画の見直しの後、その内容を反映した追加情報をCOP26までに提出する予定です。

2. その後の削減目標検討は、エネルギーミックスと整合的に、温室効果ガス(GHG)全体に関する対策・施策を積み上げ、更なる野心的な削減努力を反映した意欲的な数値を目指します。これはパリ協定上のルールにある5年毎の提出期限を待つことなく実施します。

3. 長期目標に関しては、脱炭素社会を実現する際の鍵となる「2050目標」の記述を「2050年に出来るだけ近い時期」とし、今までの「2050年以降出来る限り早い時期に」という表現から前進をしました。

今回のNDCの提出を受け、日本では本格的に地球温暖化対策計画の見直し作業に入ります。これは、11月にイギリスで開催される予定のCOP26に向けて気候変動に関する議論が新たなステージに進むことを意味します。
新型コロナウイルス危機は現在の最大の課題ではありますが、気候危機に対する取組みに遅れは許されません。気候変動対策をより強化すべく、継続して議論を積み重ねていきます。

環境省サイト資料:
「日本のNDC(国が決定する貢献)」の地球温暖化対策推進本部決定について
http://www.env.go.jp/press/107941.html

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ポイントとなる用語の解説
「NDC」:
今回提出するNDCは、Nationally Determined Contribution、国が決定する貢献と訳します。
2020年以降の温室効果ガス(GHG)排出削減等のための新たな国際枠組みであるパリ協定は、協定第2条(目的)に世界的な平均気温上昇を産業革命以前に比べて2℃より十分低く保つとともに、1.5℃に抑える努力を追求することを明記しています。その目的を達成するために、協定はその第4条(緩和)にて国内措置(削減目標・行動)をとることを各国に求めています。
NDCとは、協定第4条に基づく自国が決定するGHG削減目標と、目標達成の為の緩和努力のことを指します。

地球温暖化対策計画:
COP21でパリ協定が採択されたことを受け、地球温暖化対策の推進に関する法律に基づき、約束草案(INDC)の達成に向けた取組を含む総合的かつ計画的な温暖化対策の推進のための計画のこと。(2016年5月13日閣議決定)
温室効果ガス(GHG)の排出抑制及び吸収の量に関する目標、事業者・国民等が講ずべき措置に関する基本的事項、目標達成のために国・地方公共団体が講ずべき施策等について記載されています。

エネルギーミックス:
エネルギー資源の乏しい日本では、「エネルギーの安定供給」、「経済性」、「環境保全」が課題です。この3つを実現するためには、多種多様なエネルギー資源を安定的に確保し、バランスよく組み合わせて最大限に活用したエネルギーミックス(電源構成)が重要です。
水力、化石燃料、原子力、太陽光、風力などさまざまなエネルギー資源が存在しますが、どの資源にも「強み」と「弱み」があります。強みを理解し、弱みに配慮した上でバランスよく組み合わせることが重要です。

脱炭素:
脱炭素とは地球温暖化の原因となっている炭素の排出を防ぐために、化石燃料からの脱却を目指すことです。
日本は、最終到達点として「脱炭素社会」を掲げ、それを野心的に今世紀後半のできるだけ早期に実現していくことを目指しています。これまでは温室効果ガスの排出量を低いレベルに抑える「低炭素化」が主流でしたが、もはやそれでは、パリ協定で定められている1.5~2℃未満目標を達成することが出来ないため、現在は温室効果ガスの排出量ゼロを目指す「脱炭素化」が世界的な潮流になっています。