活動報告

新時代の社会保障改革ビジョン(1) 給付削減か負担拡大ではない、新しい第3の道(リバランス)へ

4月18日自民党の厚生労働部会で発表した「新時代の社会保障改革ビジョン」について、何回かに分けて説明をしていこうと思います。

1回目はこのビジョン発表に至った基本的な考え方について。

徹底的な国民目線で取り組んできた「国民起点プロジェクトチーム」

私が昨年の10月に厚生労働部会長に就任した際、部会の中に二つのプロジェクトチームを立ち上げました。

一つは厚生労働行政の効率化に関する「国民起点PT」(PTはプロジェクトチームの略です)。このPTでは、厚生労働省の仕事のやり方や発信の方法などについて、提供者側(厚生労働省)の目線ではなく、受け手(国民、企業、地方自治体)の視点で考え、国民の前向きな行動変化の後押しするような取り組みを実現してきました。

具体的には、ねんきん定期便の表記を見直したり健康診断の実施率のランキング介護現場の書類負担ゼロに向けた提案などです。

このPTで生まれたアイデアや取り組みは既に実現しているものが多く、政策のスピード感を発揮できるところが強みです。

令和時代にふさわしい、これまでの枠組みを超えた「社会保障改革ビジョン」を提言

そしてもう一つのプロジェクトチーム、「全世代型社会保障改革ビジョンPT」は、令和という新時代にふさわしい、全世代型社会保障のあり方を検討し、先月そのまとめを提言として発表しました。

私は、平成の次の時代には、人生100年時代、人口減少社会の到来等の構造変化に対応した新しい「この国のかたち」の基礎となる社会保障改革が必要になると約3年前から考えていました。

世界に誇れる日本の社会保障を持続可能なものにするには、社会保障のサービスを受け取る人と、負担する人のアンバランスを正すことが不可欠です。

社会保障を支える現役世代の数と、サービスの受け手の高齢者の数の比率、つまり「支える側」と「支えられる側」の人数のバランスは社会保障の質を左右する重要な要素になります。

働くことを阻害するあらゆる壁を撤廃し、「支える側」と「支えられる側」のバランスをつくりなおす

これまで通り、ある年令以上を一律に「高齢者」=「支えられる側」とする現在の考え方を維持したままでは、社会保障に必要なお金が足りる、足らないだけでなく、人生100年時代における生き方や働き方の多様化にも対応できません。

これまで社会保障改革は、増加し続ける社会保障のお金を維持、確保するために、高齢者に支払う社会保障費用を減らすか、現役世代の働く人にさらに税金として負担を増やすかの議論になりがちでした。でも貰うお金が減ったり、金銭的な負担が増えたりの話しになると、どちらの立場からも前向きには考えにくく、なかなか話しが先に進まないというのが現実でした。

これだけ社会が変わり、生き方が変化する中では、私たち自身もこれまでの「発想の壁」を超えて、高齢者への支払いを減らす(給付削減=第1の道)か、現役にさらに負担を求める(負担拡大=第2の道)かだけでなく、新しい「第3の道(リバランス)」という発想が必要ではないでしょうか。

働くことを阻害するあらゆる「壁」を撤廃し、「働いても損をしない仕組み」へと転換する。そして、経済社会の担い手を増やし、「支える側」と「支えられる側」のバランスを見ながら、高齢者への支払いと、現役世代の負担のバランスを着実に正していくことで、この国の社会保障制度、日本の経済社会全体が、皆さんのお子さんやお孫さんの時代まで、世界的にみても素晴らしい人生100年の国であり続けることを目指したいと考えました。

「人生100年時代の社会保障」は、22世紀を見据えた政策

今年生まれた日本の子供たちは、平均寿命を全うすると22世紀の幕開け(2101年から)まで生きることになります。(男性:2019年+81歳=2100年、女性:2019年+88歳=2107年)

そして今後も平均寿命は伸びていき、日本人にとって100歳まで生きることは、ファンタジーではなくリアリティになりました。

だからこそ、100年生きることを見据えた改革ビジョンを、様々な関係者の協力と国民の皆さんの理解を得ながら実現していくことが重要です。

現に、3年前から訴え続けてきた人生100年時代の政策は、次々と実現し、日本の未来に備え始めています。

なかなか関心を持ってもらうことが難しいのが政治ですが、今、日本が置かれている状況と将来について、またどのような方向性と取り組みを進めているのか、伝えていきます。

次回は「3つの壁」について、お話したいと思います。