活動報告

瀬戸法改正の国会審議に備え、兵庫県明石市と香川県高松市を視察しました

昨日は「瀬戸内海環境保全特別措置法」(瀬戸法)の改正の国会審議に備え、兵庫県明石市と香川県高松市を視察しました。法改正の最大のポイントである「栄養塩類管理制度」の創設について、歓迎・慎重双方の立場から直接意見を伺うことを目的にした視察です。

明石市では、長年の努力により水質の改善が進み、海水がきれいになり過ぎたことで、海苔の養殖業への打撃、この地域の春の風物詩の魚「いかなご」の収穫量が大幅に減っている状況を伺いました。
また、香川県のブランド魚 オリーブハマチの養殖をしている高松の庵治では、水質の規制を見直すことで、以前のように海が汚染され、赤潮の発生が起き、ハマチの養殖に影響が出ないかと懸念していることを聞きました。

この改正では、瀬戸内海一律の水質規制から、地域の特徴に沿った水質管理を可能にします。つまり、「規制から管理へ」という転換です。この事により、瀬戸内海の生態系や自然を守りながら、漁業者の生活も守る、持続可能な海と、持続可能な経済の両方を目指すものです(きれいな海と豊かな海の両立とも言えます)。
気候変動対策が進まず、このまま進行した場合、瀬戸内海は今世紀中に海水温が3-4度上昇する可能性があります。仮にそうなると、地域の漁業やそれに関連する産業、観光、さまざまな点で取り返しがつかない状況になるため、今回の法改正には気候変動の理念も入れました

更に、香川県は、海ごみの回収、処理について、「香川モデル」とも言える独自の対応を行っています。「香川モデル」では、漁業に関する人だけでなく、内陸も含めた県民全体で海ごみを処理する費用を負担し、漁業者の方が底引網でボランティアでごみを回収するモデルです。

今日は高松港で約20年間海ごみの回収、処理をしている漁師さんにお話を聞きました。
20年前、自分の釣った鯛がビニールにからまり、とても苦しそうな様子をみて、これは何とかしないといけないと思い、それから底引網での海ごみの回収を始めたそうです。

2019年のG20大阪ブルー・オーシャン・ビジョンでは日本は議長国として、「2050年までに海洋プラスチックごみによる追加的な汚染をゼロにまで削減することを目指す。」という非常に高い目標を発表しました。この目標達成のために、「香川モデル」のような取り組みが他の地域に拡大していくように、環境省としても後押しいきたい考えています。今回の法改正では、海洋プラスチックごみ対策における国と地域、地域間での連携も責務として入れていますので、この意義も伝えていきたいと思います。

今回、現場を視察し声を聞くことで、改めて環境省が負っている責任を痛感し、この法改正の意義を実感できる出張になりました。瀬戸法の国会審議に向けて、意味のある視察にご協力頂いた兵庫県、明石市、香川県、高松市の皆さん、関係者の皆さん、本当にありがとうございました!