活動報告

「瀬戸内海環境保全特別措置法」(瀬戸法)の改正

環境省はこの国会で4本の法案を提出予定ですが、先週の金曜日、4つの法案のうちの一つ「瀬戸内海環境保全特別措置法」(瀬戸法)の改正について閣議決定がされました。今後、成立に向け、審議が行われます。

瀬戸法の改正は、
①「水質規制」から「水質管理」へ。
瀬戸内海で水質の改善が進んだことで、地域によっては漁業に逆に悪影響を及ぼしていることもあり、沿岸の府県がそれぞれの海域の実情に応じて水質を管理できるようにすることを盛り込みました。

②「ブルーカーボン」の推進。
気候変動に関連し、温室効果ガスの吸収源と言われる、「ブルーカーボン」の役割も期待される藻場の保全を進めます。

③「海洋プラスチックごみ」の対策強化。
海洋プラスチックごみを含む、漂流ごみ等の除去・発生抑制の対策を、国・地方、公共団体が連携して行うことを規定します。

以前の瀬戸内海では工場や家庭からの排水や開発が原因で窒素やリンが増え、赤潮が頻発していましたが、規制を強化した結果、窒素やリンなどの濃度は大幅に低下しました。
その一方、プランクトンの栄養にもなる窒素やリンが減ったことで、地域によっては養殖のりの「色落ち」など、かえって漁業に悪影響を及ぼしているということがあります。
そのため、今回の改正では「栄養塩類管理制度の導入」を追加し、水質管理の在り方を見直す方針を決めました。

対象の瀬戸内海は、本州、四国、九州によって囲まれ、約700の島々と7,230kmの長い海岸線、2万3,000平方キロメートルの面積を有する日本最大の内海です。瀬戸内海には12の湾と灘があり、それぞれの湾や灘はさまざまな特徴を持っています。

今回の改正により、瀬戸内海を一律にルールを決めるのではなく、海域ごとに水質管理を行うことで、海域に生息する魚介類の生育の場としての藻場、魚介類の生態系の維持、水質を保ち、持続可能な海洋環境の維持を目指します。こういったきめ細かい水質管理政策は世界的にも画期的なことだと思います。

「ブルーカーボン」の役割を期待する藻場についてですが、大気から海中で海洋生物によって吸収・貯留される炭素をブルーカーボンと呼びます。2009年国連環境計画(UNEP)の報告書が公開され、その中にブルーカーボンという言葉が初めて表記されたもので、比較的新しい言葉です。今後日本でも研究が進められていくことを期待していますが、海に囲まれた日本では、一つ一つは微量であっても、活用しない理由はないのではと考えています。
私の地元の横須賀市でも、1月29日にゼロカーボンシティ宣言をしましたが、その中でもブルーカーボンに触れています。

また、海洋プラスチックごみに関して、特にペットボトルについては瀬戸内海沿岸に漂着するもののほとんどは沿岸の府県(日本国内)からとデータ上考えられることから、プラスチックごみの除去や発生を抑えるための対策を国と沿岸の自治体が連携して講じていくことも盛り込まれています。2019年のG20で「大阪ブルーオーシャンビジョン」をまとめた日本として、大阪を含む瀬戸内海地域で海洋プラスチックゴミ対策が進むことを期待しています。

昨年菅総理が2050年までのカーボンニュートラルを宣言し、さまざまな政策の打ち出しが必要な中、瀬戸法の改正の中に、環境保全に加えて、今までは法律になかった気候変動に関する項目が入ったことは、法改正の意義を更に高める大きな一歩だと思います。

先週はゼロカーボンシティ(2050年 二酸化炭素排出実質ゼロ表明 自治体)の人口が遂に1億人を超えました。ここまで、自治体の方々、関係団体の皆さま、環境省のスタッフなど、多くの方によって支援いただいたことに感謝です。

これから、4本の法案の残り3本について、内容やその意義などを説明していきます。

参考:
瀬戸内海環境保全特別措置法の一部を改正する法律案の閣議決定について

せとうちネット