活動報告

東日本大震災から9年を迎えて

東日本大震災から9年になります。
改めて、お亡くなりになられた方々のご冥福をお祈りすると共に、9年間復興に取り組んでこられた東北の皆さんをはじめとする関係者の皆さんに心からの敬意を表します。
本来であれば、今日は政府による「東日本大震災追悼式」に国務大臣として参列の予定でしたが、追悼式が新型コロナウイルス感染症拡大防止のために取りやめとなりました。追悼式の中止は大変残念なことですが、現在の状況を考え、政府が判断したことについてご理解頂ければと思います。
先週から、福島の再生土を使用し、鉢植えの観葉植物という形で環境省の私の部屋(大臣室)に置き始めました。これは小さな一歩かもしれませんが、福島県外ではじめて再生土の「実証事業」を始めたことになります。この取組みを開始するに至った想いや背景をお話したいと思います。

「福島の鉢植え」を私の部屋に置くこと

2011年の原発事故による除染で、1,400万立方メートル(東京ドーム約11杯分)の除去土壌が発生しています。除染とは、生活する空間で受ける放射線の量を減らすために、放射性物質を取り除いたり(除去)、土やコンクリートで覆ったり(遮へい)、遠ざけたりすることです。
この除染した土を最終的に処分するまでの間、福島県内にある中間貯蔵施設に、安全第一で日々搬入を進めています。環境省では、法律に定める中間貯蔵開始後30年以内の福島県外での最終処分に向けて、再生資材化した安全な土の利用を段階的に進めるため、実証事業を行なっています。
実証事業の一つに飯舘(いいたて)村の長泥(ながどろ)地区での取組みがあります。飯舘村の再生土で栽培されたお花を環境省の大臣室や記者会見場で飾ったり、昨年11月に開催した「日中韓三ヶ国環境大臣会合」の会場での花として、また最近では復興庁、法務省、経産省、農水省でも飾っています。
飯舘村の菅野(かんの)村長とは以前から面識がありますが、大臣になってからは昨年の秋に大臣室を訪問してくださり、先月私も現地を視察しました。
菅野村長、双葉郡の首長の方々や地域の皆さんとお話して感じているのは、復興に向けた中長期の計画を遅れることなく着実に進めて欲しいという想いに加えて、小さなことでも動きや変化を求める強い想いです。福島の方々にとっては、9年間原発事故と向き合い、風評被害や時間の経過と戦ってきている中で、「一日も早く」という切実な願いは当然のことです。
そして、内堀福島県知事をはじめ、福島の皆さんと最近お会いした際に必ず言われることは、風化と根強い風評被害への不安です。
そんな中で、環境省の職員と議論を重ね、環境省として何かできることはないかと考えた行動の一つが、「福島の鉢植え」を大臣室に置くということでした。

風評被害への対応は科学的根拠と情報公開

今回、中間貯蔵施設に搬入され分別した土を鉢植え(8個)に使用し、表面を土で覆い観葉植物を植えて、3/5(木)の夕方、福島から環境省に運んできました。
利用している土(再生資材)の放射能濃度は中間貯蔵施設に搬入されている土の中央値(約2,800ベクレル/kg)よりも高い5,100ベクレル/kgです。(実証事業で使用する再生土は、管理が明確な公共事業等に限って使用されるため、8,000ベクレル/kgが再生利用の上限です。)
鉢植えを設置した前後の大臣室の空間線量率(空間の単位時間あたりの放射線量のこと)は、時間あたり約0.060マイクロシーベルト(0.060μSv/時)でした。ただ、この空間線量率は人の出入りなどによっても、上がったり下がったりするもので、私が見ている間でも空間線量率の数字は0.058-0.070マイクロシーベルト(0.058-0.070μSv/時)くらいの動きがありました。
ちなみに、身の回りにある放射線として、飛行機での移動(東京ーニューヨーク間往復、110μSv/回-160μSv/回)や、病院で使用する胸部レントゲン(60μSv/回)、胸部CTスキャン(2,400μSv/回-12,900μSv/回)などがあります。
今後、私自身や大臣室に日常出入りするスタッフが空間線量率を定期的に計測して、今回の実証事業の安全性を科学的に示していきたいと考えています。

福島と東北の復興に向けて

今回、私の部屋の鉢植えの脇には、福島の土のことや鉢植えの説明、主要都市の空間線量率の測定結果など、解説パネルを設置しました。今後は英語のパネルも設置し、国内外からの大臣室に来られる方々に対して、「福島の鉢植え」を通じて、福島の現状についての正しい理解を広めていきたいと思います。
除染した土を最終的に処分するまでの間に保管する中間貯蔵施設を苦渋の決断により受け入れた双葉町、大熊町。3/7(土)には常磐道の常磐双葉インターチェンジの開通、3/14(土)からは9年ぶりに常磐線の全線開通に伴い、先週3/4(水)には双葉町、3/5(木)には大熊町で一部避難指示の解除がされました。昨日は桜の名所で有名な富岡町の夜ノ森(よのもり)地区の避難指示の一部解除もされました。

福島が向き合う風評・風化という課題に一緒に向き合っていきたいという想いが「福島の鉢植え」には込められています。これからも、福島と同じ方向を向きながら、真の復興に向けて一歩一歩、歩みを進めてまいります。